……おかしいぞ…………。 キチガイだキチガイだ……そんな馬鹿な……不思議な事が……アハハハ……。 九州帝国大学法医学教授 若林鏡太郎 医学部長 この名刺を二三度繰り返して読み直した私は、又も 唖然 ( あぜん )となった。
「胎児の夢」というタイトルで、その破天荒な形式と内容のため、全教授が学術的価値を否定しましたが、ただひとり斎藤助教授だけが絶賛して譲らず、とうとう第1位の成績で卒業したのに、式の当日、正木(当然まだ教授ではない)は行方をくらましました。 だから、「ヘエ。
正木教授は研究のためと頭がおかしくなるようなことをし続けてきたり、私を「お兄様」と呼んで慕う妹は終始泣いていたりと、主人公にとって苦難の1日が幕をあけます……。 胸の動悸がみるみる高まった。
……ソレッ切りである……。 その声が一しきり 烈 ( はげ )しく波動して、渦巻いて、消え去ったあとには、四つの壁と、三つの窓と、一つの扉が、いよいよ厳粛に静まり返っているばかりである。 ここは上記の私的覚書を読まれたあとに、訪れると良いと思います。
9「私」の記憶が戻るようにと色々と取り計らってくれている。 『ドグラ・マグラ』に関する考察:脳髄論、胎児の夢は何を意味する?モヨ子との関係を含め考察してみた 「脳髄論」と「胎児の夢」は、正木教授の書いた論文の題名です。
今では科学理論としては否定されている(と言うかあんまり役に立たない)のですが、胎児の発生過程を見ると、進化の過程に沿ってその形が、単細胞の受精卵から、魚のようになり、トカゲのようになり、獣のようになり、人のようになるのは、印象としてはその通りです。 【スタッフ】• 静かに手を挙げて私を制した。 そんなもんですかね」なんて他人事のようなことがいえたのではないかと思ったのです。
12そうして眼の 球 ( たま )だけをグルリグルリと上下左右に廻転さしてみた。
そうしてその少女の 屍体 ( したい )を眼の前に横たえながら、冷静な態度で紙を拡げて写生をしていた……という、非常に特異な、不可思議な事実が曝露されまして、大評判になってからの事で御座います……が……同時に、その青年の属する一家の血統を、そんなにまで悲惨な状態に陥れてしまったのが、何の目的であったかという事実とその犯人が 何人 ( なんぴと )であるかという、この二つの根本問題だけは、今日までも依然として不明のままになっているという……どこまで奇怪、深刻を極めているか 判然 ( わか )らない事件で御座います。 どうもお 寝 ( やす )みのところをお妨げ致しまして恐縮に堪えませぬが、かように突然にお伺い致しました理由と申しますのは 他事 ( ほか )でも御座いませぬ。
室田日出男• 伏線からたどる、主人公の正体とは? 探偵小説として発表された作品で、殺人事件を推理、解決することがテーマの1つなのですが、主人公の「私」は一体何者なのかということが、本人にとって切実な問題であり、読者の大きな興味となります。
そうして生き返っている妾です。 1922年、童話を発表し、1926年から本格的な作家生活に入ります。
叫ぼうにも叫ばれず、出ようにも出られぬ恐怖に包まれて、部屋の 中央 ( まんなか )に棒立ちになったまま喘いでいた。 思わずモウ一度、 背後 ( うしろ )を振り返った。 こう気が付くと、私はいよいよたまらなくなって、床の上に引っくり返った。
ではどこで考えるかというと、全身の全ての細胞が考えていて、感じていて、感情を持っている、というのです。